カウンセリング

 技法解説
 

心理療法の技法をご紹介します。当オフィスではこれらの技法を来談者のニーズに合わせオーダーメイドで組み立てアプローチします。

精神分析的心理療法

 今から100年あまり前、フロイトは「無意識」という概念を想定しその概念に基いて人間を理解しようとしました。精神分析的心理療法は、そのフロイトの考え方をベースにしています。その後、多くの実践家や理論家による練り直しが行われ、現在は方法論がより洗練されてきています。

 無意識を扱うことは今でも変わりませんが、現在の精神分析では個人の無意識的な対象関係を中心にすえて、その人が抱える問題を理解することに焦点が当てられています。人は人との関わりを通して自分自身をかたちづくっていくものだと考えるわけです。人が最初に体験する人間関係は親との関係です。
 精神分析的心理療法では、その人が親との関係をどのように体験し自己イメージを作ってきているのか、また、その中でかたちづくられた無意識のイメージがその後の対人関係にどのように影響しているか、現在の生きにくさやつまずきとどのようにつながっているのかということを読み取り、現在に至るひと続きの個人の物語として理解していこうとします。
 しかし、それは何でも親のせいにするということではありません。あくまでもその人自身の心の中の問題として扱うということです。人は、理解することによって問題を客観的に見つめることができるようになるものです。

 精神分析的心理療法では、自分自身を深く理解することで現実的な問題解決力を身につけることを目指します。 

認知行動療法

 認知行動療法では、人間の無意識よりも考え方や行動面を重視します。人間の感情は考え方や行動によって左右されるという視点をベースとしています。
 この療法では、その人の抱える問題を考え方のゆがみによる悪循環のパターンとしてとらえます。パニック発作や不安発作などの症状の背景には「常に自分をコントロールしていないとたいへんなことになる」など、発作と密接につながる思いこみがあると言われます。この思いこみは、習慣化されているためにその人自身も意識することなく用いている考え方であることから「自動思考」と呼ばれています。

 日常生活のどういう場面でどういう考え方をしてどのような悪循環におちいっていくのか、日々自分をモニタリングし記録することを続ける中からそのパターンを把握し、背景にある自動思考をつきとめます。そしてその自動思考の矛盾を検証し(「常に自分をコントロールするのは不可能」)、それに変わる新しい考え方で自動思考を反駁します(「コントロールできなくてもたいへんなことにはならない」)。
 認知行動療法では、自分自身を深く知ることよりも症状の消失や考え方の変化などに目標をしぼって取り組みます。

統合的心理療法

 心理療法の世界は、精神分析の誕生とともに始まり、次々と多様な理論・技法の誕生が続きました。そして現在では、既存の理論・技法を統合的に活用する段階に入ったと言われています。
 心理療法の統合の動きは、異なる理論や技法のギャップを埋め、橋渡しをしようとすることとも言えます。これには、実践家からの要請が大きな後押しとなりました。近年、人々が抱える問題は複雑さを増し、オーダーメイドの心理療法が求められていると言えるのかもしれません。

 このような心理療法は、統合的心理療法と呼ばれています。ここでは、問題の発生と継続のメカニズムや心理療法を受ける方の状態を、どのようにとらえ、どのような治療目標を目指して、介入を組み立てるのか、それぞれのケースに応じた技法の選択が行われることになります。
 例えば、症状や問題は精神分析理論で見立て、クライエント中心療法の態度で関わり、認知行動療法の技法を活用して症状の軽減をはかる、といった方法の組み合わせです。
 このような心理療法を行なう場合、ケースの見立てと治療同盟(カウンセラーとの信頼関係)が特に大切になります。というのは、統合的に方法を組み合わせ実施していく際に、その場の行き当たりばったりであってはならないからです。カウンセラーは、専門家として症状や問題・それを抱えている方の状態を適切に把握し、その方との合意をもとにした、心理療法を進めていく必要があるからです。

夢分析

 夢について科学的な研究をはじめておこなったのはフロイトです。フロイトは夢という非科学的にみえる現象にたいして、ひたすら科学的であろうとしました。現在では、フロイトの夢理論をそのまま応用することはあまりありませんが、この科学的であろうという態度は、後進の研究者にも引き継がれているし、尊敬したいところです。夢そのものを本格的に研究したのはユングでした。ユングは夢やビジョンの研究から、神話や昔話や宗教のさまざまなイメージの世界を研究しました。

 ユング派の夢分析では、夢を無意識からのメッセージと考え、クライエントの連想やそれを聞いた時の治療者のインスピレーション、あるいは神話やおとぎ話、または宗教の知識を用いて(拡充法という)、夢の意味するところを考えていきます。夢の解釈には、夢を夢見手の人格の内容と対応付けて考える主体水準の解釈と、夢の内容を夢見手の外界の生活状況と対応させて考える客体水準の解釈が可能です。夢に現れるイメージは現実の常識的な意味には当てはまらないことが多く、フロイトはそれを知的に象徴解釈しました。
 ユングは、元型の存在を仮定し、そこから多くの元型的イメージが夢に生じてくると考えました。グレートマザー、老賢者、影、アニマ・アニムス、子ども、永遠の少年・少女などが元型として考えられているもので、さまざまなイメージで夢の中に現れます。そうしたイメージを通して、無意識が何を夢見手に伝えようとしているのかを、クライエントと治療者が一緒に考えていくのが、夢分析ですることです。

箱庭療法

 全体を一望できる大きさの箱(57p×72cm×7p)の中に、砂とミニチュアを用いた世界が形作られます。箱庭療法は、ユングによって子どもの治療者の才能を認められたカルフ・D.が、イギリスのローエンフェルドに学んだ世界技法が元になっています。カルフはこれをSandspiel(ドイツ語。英語ではsand play therapy)として発展させました。
 このカルフのもとで体験して日本に導入し、箱庭療法としたのが河合隼雄先生です。もともと日本には箱庭遊びの歴史があり、日本人は言語なしで視覚的直観的に物事を把握することに優れていると言われています。その後日本では急速に広まっていきました。

 年齢的には、ミニチュアを認識し、それに思いをはせることができる3歳以上ぐらいのレベルであれば、上限はありません。適応されるクライエントの症状も病態水準もさまざまで、自己啓発を目指したものから、神経症、心身症、人格障害、精神病圏の人の治療まで、多くの治験例があります。

 必ずしもことばは必要でなく、簡単にできて、砂に触ることができ、視覚的であることが箱庭の大きな特徴です。こうした特徴は、ことばではすくい切れない心の表現を促すという点では治療的であり、時には自我の統合する力を超えて表現しすぎてしまうという点では難しさもあります。そのあたりは、治療者の感性や判断力が必要となります。